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「あー、何々ー、みんなー。てか、そう固くならないでよね」
そう言って、少し遅れてから、後ろのスクリーンにその人間と思しき映像が映った。
そこに映し出されていた様子から見ると、どうやらその人間は男で、歳は30半ばのように見えた。また正装で着るような、灰色の滑らかで反射させる生地のスーツに身を包み、髪はオールバックにしていた。
「あ、もしかして、まだここがどこなのか。僕が誰なのか分かっていないようだね」
そう言うと、男はつまらなそうに、その場を片足で一回転した。それから、回転し終えたところで、目の前の台に両手をついて、身を乗り出すようにそこにあるマイクに顔を近づけた。
「じゃあ、ヒントをあげよっか。うーん……そうだねー……。あ! こんなんのはどう? 僕は人間ではありません。名前もありません。
――――こう言ったら分かるでしょ!」
男は腕を組んで、納得するかのように深く何度か頷いた。だが、こちらからしてみれば、一体なんの話をしているかさっぱりだ。
それに、ではあの男の正体が人間でなければ、一体なんなのだろう。いくら凝視したところで、その男がモンスターになったりすることはない。何の変哲もない、ただの人間にしか、僕には見えなかった。
「あー、沈黙だねー。これをスベるって言うの? ……まぁ、僕には関係ないことだけど……。
じゃ、2つ目のヒント言ってあげよっか。2つ目のヒントは、君たちも人間じゃないってこと。
――――あ、君たち、まだ自分のことを人間って思ってちゃダメだよ? あくまで君たちは人間わず!なんだから――――」
そう言って、その男は笑いを堪えるかのように、俯いた。そして、男は教卓についていた手を曲げ、肘をついて、尻を後ろに突き出した格好をした。
「ここまで一気に言っちゃったけど……もう、これで分かったよね?」
いや、全く分かりません。というか、これが例え漫画やドラマの名探偵だろうと刑事だろうと、分かるはずがない。
そもそも自分が人間でないというのはどういう意味か――――。
手足があって、頭も鼻も目もあって……、二足歩行もしていて――――。
僕に人間じゃない定義が当てはまるものなんて、ないはずだ――――。
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