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ゆらり、ゆらり……。
まるで、大きな揺り籠にでも揺られているような、そんな心地の良い揺れが、自分の正座している座布団の下から伝わって来て……。
……かくん、かくん。
その度に、俺の意識は沈殿と浮上を繰り返してしまう。
寄せては返す波のように、一定の間隔を置いて襲ってくる睡魔は、既に抗いがたいほどに大きくなっていた。
感覚的には、走行中の列車の座席で長時間揺られている時のような感じに近いが……。
……しかし。
今、俺が乗っている乗り物……。
というか、この移動術式の心地良さは、正直に言って列車の比ではない。
……まぁ、それはあくまで主観の話だが…………とにかく。
もしもこの場に布団でもあれば、潜り込んで思いっきり眠ってしまいたい。
などと、少々本気で考えてしまうほどに、今、俺のいるこの空間は気持ち良くて……。
そして、同時に俺は心身共に疲れ果てていた。
「……ふぁっ」
思わず漏れたあくびを手で押さえ、目じりに滲んだ涙を拭っていると、
「レオンさん。大丈夫ですか?」
ふと、隣から鈴を転がしたような可愛らしい声が聞こえて来た。
そちらを見ると、長い睫毛(まつげ)に縁取られた大きな切れ長の瞳が特徴的な女の子が、心配そうに俺の顔を覗き込んでいて……。
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