演劇

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       5 翌日。 昨日と同様に朝早く女子寮を出発した俺は、上履きと、一日前よりも少しよれた『聖騎士』の台本を手にして、真っ直ぐに学院敷地隅の古い講堂へと向かった。 エルの話では、今日から本格的に身振りや舞台での立ち回り方等についての練習も行うため、昨日よりも多少動きやすい服装で来た方がいいと言われたが……。 まぁ、その辺りは状況に応じて制服の上着を脱ぐなどすれば問題ないだろう。 それに、スカートの方は、もとより十分動きやすいので特に着替えなくても大丈夫な気がした。 朝靄の立ち込めていた昨日とは違って、すっきりと晴れ渡った視界の奥に目的の建物を捉えた俺は、まだ薄暗い空の下、何となく本日の練習の事を考えつつ、ほんの少しだけ足を速めたのだった。 講堂に到着した俺は、開いている入り口の前で立ち止まって、軽く周りを見回したが、けれど、周囲にエルの姿は見つけられなかった。 もう中に入ってるのかな、と、なんとなしに考えながら入り口へと足を向けた瞬間……。 ふと、俺は建物の中から囁くようなエルの声を聞いた。 (……?) どうしたのだろうと思いつつ、足早に入り口まで歩み寄って、そっと中の様子を窺ってみると……。
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