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「ねぇ、エルちゃん。この食べ物ってね、なんか生産者の人達が八十八の手間をかけて作ってるのが名前の由来らしいよ」
『イザナギ』を訪れた際、偶然耳にしていた豆知識を少し得意げに話してみると、彼女は素直に感心した様子で微笑んでくれた。
おぉ、やったぜ。と、彼女の好感触な反応に内心で密かに満足しつつ、俺は手にしていた小さめの三角形にかぶりついた。
同じく『イザナギ』原産の、黒っぽい紙のような食べ物で部分的に巻かれているこの料理の名前は、おに……。
……い、いや、おむ…………あれ?
えっと、どっちだったっけ?
(あ、あれ? あれ……?)
「あ、アリシアちゃん?」
「……あっ、うん。なに? エルちゃん」
「アリシアちゃん、もしかして、これ苦手?」
「え? ううん、そんな事ないよ。どうして?」
「だって、アリシアちゃん。ちょっと食べてからは難しい顔してて……。だから、実は苦手だったのかなって」
「っ……。う、ううん。大丈夫だよ。これ、好きだから。あはは……」
片手で後頭部を掻く素振りをしながら、乾いた笑いでエルの心配を受け流した俺は、直前まで頭の中を占拠していた考えを慌てて脳裏の片隅へと追いやってから、手の中のかじりかけを口に放り込んだ。
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