演劇

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改めて考えてみると、なかなかに非日常的でロマンチックな状況の中に自分が身を置いている事を実感する。 あたかも、『青春』や『恋愛』を題材にした物語の中に入り込んだかのような、そんなふわふわとした気分だ。 「…………」 妙に現実感の希薄な、この切り取られた世界の真ん中で、俺は何気なく考えてみた。 ……もしも、本の中の…………。 例えば、それこそ『青春』や『恋愛』を題材にした物語の世界の主人公達が今の自分と同じ状況に遭遇したら……。いったい、彼らはどんな行動を取るのだろうか? 選択肢としては、『このまま添い寝を継続』とか、『そっと自分の服を被せてあげる』とか……。 『あれこれ考え過ぎて結局何も出来ない』というのも、ある意味答えの一つだと思うけれど……。 ……やはり、ここは『ヒロインに何かしらのちょっかいを出す』とかだろうか? などと、そんな愚にもつかない事を考えながら、俺はまたエルの寝顔に目を向けた。 ぷくっとした唇から小さな寝息が漏れるたびに、彼女の、赤みの差した健康的な頬が僅かに上下する。 少し視線を落としてみると、滑らかな細い首元に小さなほくろが見て取れた。 更に、もう少し目線を動かすと、今度は両手を枕にして眠っているため寄せられた状態になっているブラウスの胸元が……。 (……ヒロインにちょっかい…………)
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