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なんとなく心の中で唱えてみてから、けれど、
(……いやいやそれはない)
すぐに馬鹿げた考えを一笑に付し、とりあえず、講堂の中から自分とエルの分の上着を取りに行くために体を起こす。
いくらなんでも、このままでは彼女が風邪をひくかもしれない。
ついでに自分も少し寒くなってきたので、まぁ丁度いいだろう。
上着を取って戻って来た後は、エルが起きるまで隣で台本でも読んでいよう。
……本当は俺も少し眠りたいけれど、女子が二人並んで屋外で昼寝をするのは流石に危ないし。
……いや、まぁ、俺は本当は男なんだけど。
などと、そろそろ主張し続けるのも疲れてきた本来の自分の事を考え、思わず重たいため息をついてからその場を立とうとした直後。
(あれ……?)
ふと目を落としたエルの顔に、俺は何か引っ掛かるものを感じた。
(これって……)
少しの間見つめていると、すぐに違和感の正体に気が付く。
……彼女の口元に、いわゆる“お弁当”が付いていたのだ。
どうやら、さっきまでは角度的にセミショートの髪の毛に隠れる形になっていて見えなかったらしい。
「…………」
無言のまま、俺は四つん這いの体勢でエルに近づくと、そっと口元の“お弁当”に手を伸ばした。
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