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ちょんっ。
伸ばした指先が彼女の頬に触れて、気持ちよさげな寝顔がくすぐったそうに綻(ほころ)んだ。
「っ……」
思わぬ不意打ちに動揺して、咄嗟に手を引っ込めてしまった。
(……いや。別に、やましい事をするつもりとかは無いんだから…………)
胸の中で言い訳のように呟いてから、俺はもう一度エルの口元の“お弁当”に手を伸ばそうとする。
……けれど、なぜだろう。
今度は数秒前のように、なかなか彼女の顔に手が伸びない。
やはり変に意識してしまったせいだろうか?
一度、四つんばいのまま大きく深呼吸をして、それから改めてエルの顔を見るも……。
すぐに、なんとも言えない気恥ずかしさに心の中を埋め尽くされてしまう。
どきどきと、耳元で心臓の音がうるさい。
指先が小刻みに震える。
顔が熱い。
……あぁ、もう。
ふるふると頭を振ってから、再度、目の前を見据える。
(ちゃんとしろよ、気持ち悪いぞ)
言い聞かせるように内心で呟いてから、俺は今度こそ腕を伸ばした。
すっと、さりげなくエルの口元へと……。
「ねぇねぇ! アリシアちゃん何やってるの? 『学院祭』フケて女の子とデート? それともこんなところに二人でシケこんで不純同性交遊?」
……背後から元気いっぱいの声が聞こえた瞬間、完全に自分の中の時間が停止した。
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