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「……エルちゃん、ごめんね」
露骨に動揺した様子の彼女を見ていたら、なんだか無性に申し訳なくなってしまい、俺は思わず頭を下げて謝った。
「…………え? あっ、う、ううん。別に大丈夫だよ」
気にしないで、と、優しい口調で最後にそう言い添えたエルの表情からは、精神的な余裕などは微塵も感じられなかった。
「『もう! お父様なんて大っ嫌い!』」
エルとの間の雰囲気が気まずいものになっていく一方で、元凶であるフウは俺の台本を片手に職務放棄全開で演劇の練習を進めて行く。
……っていうか、今の台詞って、一応俺の――。
「『ご機嫌を直してください、アデレード様。可愛らしいお顔が台無しですよ?』」
……お前も楽しそうだな、リク。
やたらとハイテンションなお姫様と、妙にヘラヘラした騎士団長が茶番を繰り広げるのを遠巻きにしながら、俺は密かにため息をついた。
おそらく、ユキヒメがこの講堂に到着するまでフウ達の寸劇は終わらないだろう。
なにしろ、彼女はかなりの気分屋の上に、常にマイペースで人の言う事はほとんど聞かな――。
「ねぇ、アリシアちゃん! ちょっとこっち来て!」
ぴょんぴょんと跳びはねながら、唐突にフウは俺を手招きしてきた。
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