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(メンタル強いなぁ……)
もしも俺がフウなら、流石にこの茶番を続けられなくなるところなのだが……。
「『さぁ、おとなしくしていてくださいよ? アデレード様』」
彼女は、むしろここからが本番とでも言わんばかりに目を輝かせ、両手をゆっくりと俺の胸元へと伸ばして来る。
……これって遊びだよね?
一歩間違ったら、とても陰湿で尚且ついかがわしい何かの現場のように見えてくる気がするのは……。
まぁ、きっと気のせいではないだろう。
……それにしても、彼女をここまで突き動かすものとは、いったい何なのだろうか?
おかしな状況に身を置いているせいか、逆に冷静になっていく頭でフウの行動心理について考えるものの……。
けれどその次の瞬間に、高揚した彼女の顔と、いやらしい動きをする彼女の指が目と鼻の先にまで迫ってきているのを認めた俺は、
「すぅ……はぁ……」
少し慌てて思考を打ち切ると、あえて一旦、ここで小さく深呼吸。
そして、不思議と冴(さ)えていく頭で、急いで現状の打開策を練り上げると、改めてフウの目を見つめた。
……あくまでも彼女がその気ならば、俺も相応の態度で応じなければならない。
相応の態度…………すなわち、アドリブでのお姫様の演技。
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