演劇

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少し引きつった笑顔で解放を要求すると、リクはあっさりと手を放してくれた。 (……痛かった) 少し赤くなってしまった両手首を交互にさすりながら、小さくため息をつく。 ……それにしても、以前にフウ達とパーティーを組んでいた時もそうだったが…………。 どうやら彼女達の、こういった寸劇で羽目を外すところは相変わらずのようだ。 (……大体、おふざけの煽りを食って大変な目に遭うのは、俺とクウカイだったっけ) 主に、茶番等で変な無茶ぶりをされたり、フウ達がふざけ過ぎた挙げ句、微妙な雰囲気になった場の後始末を押し付けられたり……。 「……はぁ」 在りし日の記憶に思いを馳せて、大変だったなぁとしみじみしていると……。 「……あ、アリシア殿」 不意に、俺は隣に歩み寄ってきたユキヒメから控えめに声を掛けられ、彼女に向き直った。 先ほどまで目を三角にしてフウ達を見据えていた彼女は、しかし、今はどことなく不安そうに俺の目を見つめていた。 さばさばした性格の彼女にしては珍しく、少しの間、優柔気味にためらってから、 「すまない。……その、君に迷惑をかけてしまって」 軽く頭を下げて、心から申し訳なさそうに謝罪。 「ユキヒメさん……。ううん、ユキヒメさんは悪くないよ? 助けてくれてありがと」
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