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(フウ……)
「ヒメ、ありがとう!」
俺が呆れの表情で見つめる先で、鼻先にクリームを付けながら悪びれもせずにユキヒメに礼を言うフウは、瞬く間に強奪したクレープを平らげてしまった。
ぺろりと小さな口の周りを舐めてから、「ねぇヒメ! もう一個ちょーだい」と、盗人猛々しくもそう続けた時。
スッ……。
ユキヒメは、おもむろにクレープを袋ごと俺に差し出した。
「……悪いけど、これ、少しの間持っていてくれないか?」
「う、うん……」
受け取ると、彼女はほんの少し青みがかった、雪のように白いその凛々しい眉をひくつかせながら、歪(いびつ)な笑顔で壁際のフウに向き直った。
「…………」
口を閉ざして、悠然とフウの元へと歩いて行くユキヒメの背中から本能的に剣呑な気配を感じ取った俺は、少し温かいクレープの袋を抱えたまま、こっそりと彼女達とは反対側の壁際へと避難。
そんな俺の隣に、今までずっと事の成り行きを見守っていたエルと、今までずっとへらへらしていたリクが集まって来た。
「ね、ねぇ、アリシアちゃん……」
流石に心配になったのか、俺の上着の肩口を軽く掴みながら『あれ、なんとかしなきゃ……』とでも言いたげな視線を送ってくるエルに小さく頷いてから……。
俺は、もう一人の避難民に首を向けた。
「り、リクくん……」
「あはは」
あはは、じゃねぇよ。
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