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けれども視線の先の彼は、一度、どこかからかうような笑顔を俺に向けると、それきり、またフウ達の方へと向き直ってしまった。
「………」
不誠実極まりない態度であしらわれた俺は、その後もリクの横顔を非難がましく見つめてやったのだが……。
……やがて、あまりの手応えの無さに耐えかねて、自分も正面へと首を向けた。
もしゃもしゃと、リクの横暴によって口に突っ込まれた焼き菓子を頬張りながら、
(そういえば……)
ふと、脳裏を過った考えについて何気なく思案してみる。
……そういえばリクのこういうところって、なんとなく知り合いの誰かと似ている気がするのだが…………。
果たして、それはいったい誰だっただろうか?
(なんか、妙にいたずら好きっていうか、変なところで強引っていうか……)
『自分が楽しい事のためなら、多少の迷惑行為も辞さない』、というようなイメージの人物。
例えるなら……。そうだ。ジャンみたいな――。
……えっ、ジャン?
「ねぇ、アリシアさん」
俺の頭の中で、リクとジャンのイメージが一瞬シンクロしかけた直後、俺はリクに小声で呼び掛けられた。
咀嚼(そしゃく)していたクレープを飲み込んでから、ぶっきらぼうに応じる。
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