演劇

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「……なに? リクくん」 「アリシアさんって、好きな人とかいるの?」 …………一瞬、自分の中の時間が完全に停止した。 全く予想していなかった方向からの質問を受け、思わずたじろいでしまった俺に、 「アリシアさんには今、恋愛対象として意識してる男子はいる?」 彼は、再び同じような内容の質問を投げ掛けて来た。 「……う、ううん。いないよ」 アリシア・スカーレットとして学生生活を送る上で、これまでは意図的に避けていた分野についての事を執拗(しつよう)に問い掛けてくるリクから逃れるように、俺は苦笑いと共に正直に答えたのだが、 「そう? ……あっ。もしかして好きな女の子ならいるとか?」 直後、むかつく笑みを滲ませながら冗談口調で切り返してくるリクに、流石に辟易(へきえき)して、 「り、リクくんには、誰か好きな子とかいないの……?」 反射的に、俺は尋ねられた事の返事代わりに彼と同じ質問を口にした。 (……こいつって、こんなうざかったっけ?) 彼に対して、今まではどちらかといえば好印象を抱いていただけに、本日の好感度の下がり具合はなかなかのものだ。 …………もしかしてリクは、女子に対しては割と意地悪な事をするタイプなのだろうか?
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