演劇

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「うん、そうだね……。好きな子はいないけど、気になる子なら何人かいるよ」 (……気の多いヤツだな) さわやかな笑顔で、おどけたようにそう話した彼に、俺はなんとも言えない作り笑いを向けながら、 「そうなんだ。ちなみに、リクくんってどんな子が好きなの?」 とりあえず、興味のありそうな素振りを交えつつ、話の流れ的に妥当と思われる返事をしておく。 ある程度彼の内面に踏み込んだ話を振っておけば、今から話題の進路が俺の方に及ぶ可能性も多少は低くな――。 「僕は面白い子が好きだよ。アリシアさんはどんな相手が好みなのかな?」 ……るのではないかというこちらの甘い希望的観測は、瞬く間に音を立てて崩れ去った。 「……え、うっ、うん。アタシは、ね…………」 どうしよう……。 『恋愛対象として好きな相手(男子)のタイプ』という、おそらく自分史上最も嫌なこの質問に答えあぐねること約五秒。 「……た、頼りになる人、かな」 どうにか捻(ひね)り出した俺の答えに、 「へぇ」 けれど、リクは眉一つ動かさず、驚くほど淡白な返し。 (……おい。頑張って答えたんだぞ。もっとなんか反応しろよ。………恥ずかしいだろ) 思わずリクから視線を逸らして、唇を引き結ぶ。
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