演劇

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苦笑気味に心の中で小さく呟いてから、俺は改めて全ての思考を打ち切って瞳を閉じた。 これ以上、気にしたところでどうしようもない事について考えていても仕方がない。 (……それに、仮にエルの頭の羽が本物だったとしても――) 頭を毛玉のクッションに埋め直しつつ、自然と込み上げてきたあくびを噛み殺しながら、最後にほんの少し、隣で眠る女の子の事について考えていると、 「ひぅ……っ!?」 不意に、俺は左の太ももの裏を何かにまさぐられるような感覚を覚え、咄嗟におかしな悲鳴を上げてしまった。 (な、なんだ!? 今の……) 再度、跳ね上がる鼓動と共にエルの方を振り返るも、眠っている彼女が手足を動かしてイタズラを仕掛けてきたような形跡は見受けられない。 ……と、いうか…………。 現在進行形で、俺はスカートの中を何かにまさぐられ続けているのだ。 (なんだ、これ……) 明らかに人間の手や足などではない、何か……細長い紐状(ひもじょう)の物体が這い回るような……。 ……ごくり。 一度、喉を鳴らして生唾を呑み込んでから、俺は、思いきって自分のスカートに手を突っ込んだ。 そして、中で悪さを行っていた“何か”を捕まえると、勢いよく掴み上げた。 ガバッ!
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