演劇

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勢いよく頭を下げて、心からの謝罪。 真っ直ぐに送った俺の声は、しかし、ほとんど同時に発せられたエルの声と重なった。 「「…………へ?」」 間の抜けた表情と共に顔を上げると、またもシンクロするように、きょとんとしたエルの涙目と目が合った。 「「…………」」 ……そして、再び訪れたエルとの謎の無言タイム。 およそ五秒間にわたる二度目の沈黙の時間を破ったのは、今度は俺の方だった。 「え、エルちゃん、ごめんね。さっきはいきなり、その……尻尾を引っ張って……。びっくりしたよね。……痛かった、よね?」 自然、不安そうになってしまったこちらの言葉に、 「……う、ううん! そんな…………」 一瞬、彼女は驚いたように目を見開き……。けれど、すぐに力強くかぶりを振ると、 「わ、私の方こそ、黙っててごめんなさい。……実は、私は『サキュバス』の血が混じった半妖で、それで…………」 まるで懺悔(ざんげ)をするように、自身について告白した。 「だから、その……。ご、ごめんなさい」 悲痛な顔で、再度謝ったエルに、 「……別に、エルちゃんは悪くないよ?」 俺は、そっと言い聞かせるように否定の言葉を投げ掛けた。 「……えっ?」 「だって、エルちゃんのはしょうがないでしょ?」
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