演劇

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いくら魔物の血が混じっているなどと言っても、半妖である事自体は罪でもなんでもない。 実際、世の中では半妖の人達は嫌われやすい傾向にあるが……。 例え、そういう生まれつきの事を誰かに指摘され、非難されたとしても、そんなのは仕方がない事だ。 それよりも、 「アタシなんて、さっきエルちゃんのスカートをいきなり捲って……。それで、その、下着とか見ちゃったし…………」 たとえわざとではないとしても、俺のした事の方が結果的には悪い事だ。 「……エルちゃん、ごめんなさい」 俺が真剣な顔で、『スカート捲った上、下着見てごめんなさい』と謝ったら、 「…………くすっ」 エルは、少しの間毒気を抜かれたような顔をした後、やがて小さく吹き出した。 泣き笑いのような顔で、彼女は割と深刻な表情を浮かべる俺の目を見つめると、ふるふると首を振った。 「アリシアちゃん、別にわざとじゃないんでしょ? それに、女の子同士だし、そんなの気にしてないよ」 (うぐっ……) 柔らかな笑顔と一緒に放たれた無垢(むく)な一言が地味にグサリときて、俺は密かに二の句が継げなくなってしまう。 本当なら、いっそ俺の方も正体とかを暴露して楽になりたかったが、いかんせん。 そういう訳にもいかない。
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