演劇

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なぜか、少しもじもじとしながらエルが口を開いた。 「どうしたの?」 「その……。もし、アリシアちゃんがよかったら、今日は私の部屋に泊まってかない?」 俯きがちに、どこか照れ臭そうな様子で……。 けれど、上目でこちらの顔色を窺いながら、しっかりと言った。 (っ……) 瞬間、ドキッと、俺は胸が強く脈打つのを感じた。 なにしろ、生まれて初めて女の子からお泊りのお誘いをもらったのだ。 “一応”男である俺としては、当然心ときめかない事はない申し出だったが……。 「……ありがと、エルちゃん。でも…………」 やはり、そういう訳にはいかないだろう。 まず、シーマには泊まってくる事を説明していなかったし、なによりそれは倫理的にいけない事だ。 エルは、俺の事を女の子だと思って誘ってくれたのだから……。 俺がここで申し出を受け入れる事はつまり、彼女の好意につけ込んだ上、場合によっては気持ちを踏みにじる事にも繋がりかねないのだ。 だから、これ以上この部屋に留まる訳にはいかない。 「……うん。そう、だよね」 難色を示した俺を見てエルはそれとなく考えを悟ったらしく、それ以上勧めてくる事はなかった。 けれど、そのせいで僅かに影の差した、そんな彼女の顔を見据えて、 「エルちゃん。明日もよろしくね」
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