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俺は、心からの笑顔と共にそう言った。
最後に、少し照れた様子でエルが頷いたのを見届けてから、
「じゃあ……」
また明日ね、と、俺が口にしかけた時、
(………あれ?)
ふと、俺はエルの背後に何かおかしなものを見た気がした。
彼女の背中の、更に向こう。
そこにあるのは、この部屋からベランダへと繋がるガラス製の扉。
今は厚いカーテンで閉ざされているはずのガラス戸の向こうに、一瞬、確かに何かを見た気がして……。
「……ちょっとごめんね」
気付いた時には、不思議そうな表情を浮かべるエルの脇を抜けて、俺はカーテンの方へと向かっていた。
「どうしたの? アリシアちゃん」
背後からのエルの問い掛けに、
「今、カーテンの向こうに何か変なのが見えた気がして……」
特に何も考えず、本当の事をそのまま話したら、
「え……や、やだなぁ。やめてよ、アリシアちゃん」
あはは……。と、乾いた笑いを漏らしつつも、さりげなくエルは俺のそばへと歩み寄って来た。
きゅっと、微かに震える両手で俺の制服の袖を掴んでくる彼女を伴って、厚いカーテンの手前まで来た俺は、おそるおそる手を伸ばした。
波打つ大きな布の切れ間へとそっと手を差し込み、ごくりと生唾を呑み込んでから、一気に引き開ける。
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