演劇

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シャッ! 勢いよく滑車がレールを滑って、すっかり夜の帳(とばり)が降りた外の景色が露になる。 俺とエルはしばらくの間、部屋から漏れた明かりに照らされるベランダを見つめ……。 それから、きょろきょろと二人して外の様子を窺うものの、 (……何も、いない?) けれど、見回した視界の中に怪しいものを捉える事は出来なかった。 「……や、やっぱり、気のせいだったんじゃないかな?」 くいくいと俺の制服の袖を引いて、『ねっ……?』、と、小首を傾げるエルに、 「う、うん……」 とりあえずの返事として、俺は軽く頷きつつも……。やはり、胸に抱いた引っ掛かりを払拭(ふっしょく)しきれず、踵を返す事が出来ない。 (気のせい、だったのか……?) 自問気味にそんな台詞を頭の中で転がしてみるも結論を出せず、最終的には後ろ髪を引かれる思いを感じつつも、ひとまずカーテンを閉める。 そうして、そのまま半歩下がった俺を見て、エルはそっと胸を撫で下ろしてから控えめに俺を促した。 「それじゃあ、外まで送るから。行こ? アリシアちゃん」 (……五……四…………) 「うん。ありがとう、エルちゃん」 (……三……二…………) ゆっくりと玄関に向けて歩き始めたエルに続いて、俺も数歩ほど歩みを進めてから……。 (……一!) くるっ。 勢いよく身を翻し、再びカーテンに手を伸ばした。 そして。 シャッ! (……あっ)
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