演劇

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どういたしまして、と、微笑みながら返してくれるエルは……。 ……なぜか、そのまま俺の隣に腰を下ろすと、お行儀よくお山座り。 そして、ぴっとりと自分の肩を俺の肩にくっつけながら、屈託のない笑顔をこちらに向けてくれる。 「…………っ」 ……ふいっ。 数秒もしない内に、俺はそんな彼女から堪らず視線を逸らしてしまう。 軽く唇を引き結びながら小さく俯いて、じりじりとエルから距離を取ろうとする、のだが……。 急速に膨れ上がった羞恥心に今にも押しつぶされそうになっている俺の胸の内には気づく様子など微塵も無いまま、ぴとっ。 再びエルはにじり寄って、笑みと共にくっついてくる。 (うぅ……) 別に、くっつかれる事自体は決して嫌ではないのだが……。 ……ただ、今は少し困る。 なにしろ、こちらの格好が格好なのだ。 せめて、もう少しまともなナリなら、こんなに狼狽えたりはしない。 もそもそと落ち着きなく太ももを擦り合わせながら、それでも努めて平静を装いつつ、俺は受け取ったばかりのカップに口を付けた。 ほのかな湯気が立ち上るホットミルクを一口頂いた後に、やがて、俺は意を決してエルに話題を振った。 内心のもやもやを誤魔化すため、咄嗟に振った話題の内容は……。
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