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一応、誤魔化そうとしてあれこれと言い訳めいた台詞を考えるものの……。
けれど最終的には、やはりどうする事も出来ないもどかしさを胸に黙り込むしかない自分に、落胆気味にため息をついてしまう。
……もう、気にしたら負けかもしれない、と、そう結論付けてから俺は改めてエルの目を見据えた。
両手で持ったマグカップを口元に寄せ、湯気を立てるミルクを一口すすってから、いよいよ会話を再開させようとして……。
けれど、
「……ねぇ、アリシアちゃん」
口を開きかけた刹那、自分よりも先にエルが話し始めてしまったため、やむなく中途半端に開けた口を閉じて耳を傾ける。
どうしたの? と、瞳で先を促すと、
「えっと、ね。その……」
なぜか、彼女は言いにくそうに逡巡(しゅんじゅん)しつつ、それでも、すぐに俺の方に向き直って尋ねた。
「アリシアちゃんは、運命って信じてる?」
「……う、運命?」
脈絡なく振られた話の規模の大きさに、咄嗟に目を丸くしながらも、俺はすぐにかぶりを振った。
「ううん、信じてないよ。……っていうか、実はあんまり信じたくなくて。それに、そういうの、よく分からないし……。エルちゃんは運命って信じてるの?」
「うん。私は信じてるよ」
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