演劇

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「『……本当に、何もございませんか? 私の目を見て答えて下さい』」 「『グリフレット。しつこいですわよ? ……あなた、これ以上出しゃばるような真似をするのなら、私も本気で怒――』」 「『アデレード様』」 辟易した演技で突っぱねようとするエルを遮って、ずいっと彼女に顔を寄せながら、そっと笑顔で呼び掛ける。 もとより、自分の考えを曲げるつもりなどさらさら無い騎士団長の微笑みに、流石に根負けした様子のお姫様は、 「『わ、わかっ、分かりました。……あぁ、もう…………』」 少々渋い顔をしながらも、どこか嬉しそうな口ぶりで俺に言った。 「『……ねぇ、グリフレット。あなたは、運命を信じていますの?』」 「『運命、ですか?』」 「『えぇ。いくら抗ったところでどうしようもない物事の巡り合わせを、あなたは……』」 「『……いえ、私は運命など信じていません』」 小さくかぶりを振ってから、改めてエルの目を見つめ、優しく言い聞かせるような口調で俺は続ける。 「『僭越(せんえつ)ながらアデレード様に申し上げます。もしも、あなたがご自分の行く末について不安を抱いておられるのなら、それは決して悲観するべきものではございませんよ』」
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