演劇

101/125
前へ
/500ページ
次へ
エルは肩越しに笑いかけた俺と目が合うと、どこか気恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。 (え……) 咄嗟に理解出来なかった彼女のその反応についての原因を考える事、およそ数秒間。 「っ……!」 ようやく答えに思い至った俺は、慌ててぺたんと、一も二もなくその場に女の子座り。 「あ、だっ、大丈夫だよ、アリシアちゃん。大丈夫。私、何も見てないから……。だ、だから、平気…………」 俺が“それ”に気付くのと同時に、エルからは矢継ぎ早にフォローの言葉が飛んでくるのだが……。 (……ありがとう。でも、それって確実に見た人の台詞だから…………) もう、この時の俺ではなけなしの笑顔を浮かべるのが精一杯だった。 (はぁ……) 密かに胸の内でため息をついてから、俺は視線を自らの下腹部に向けた。 ……今さっきの四つんばいの時。 ほんの僅かな時間だったとはいえ、後ろから思いっきり見えてしまっていたのだ。 (うぅ……) まったく、ちょっと気取ってみたそばからこの体たらく……。 ……最悪だ。 格好悪すぎる。 脳裏に一瞬、裸の上にシャツ一枚で女の子座りをするグリフレットが、困惑気味のアデレードに物凄く気を遣ってもらってる図まで想像してしまって、思わずやるせなくなっていると……。
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

368人が本棚に入れています
本棚に追加