優しい渚真琴と──

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「ナギ」 「あ?」 「家はいいのか?」 また、湯船に体を浸からせ、俺はナギにそう質問をした。 ナギの家のことはどうでもいい。 けど、どうしても落ち着かなかった。 ナギの裸は何度も見ているし、風呂も何度も一緒に入っている。 何度も何度も何度も。 だけど、今は無性に落ち着かない。 湯船に浸かりながら、ナギの膝に座りながら。 これも、いつものことなのに。 「別に、気にすることじゃないだろ。俺の家なんて。どうせ近いし、親もおまえの家にいると直ぐ解るだろ」 そうだけど、って感じ。 こんな言葉に詰まるような真似あまりしないのに。 はぁ、落ち着かない。 「まぁ、そうだね。でも、時間遅い」 「大丈夫だって。上がったら帰るから。な、それで良いだろ」 「…ウン。俺、先上がる」 そろそろ逆上せてしまいそうだった。 頭がボーッとして、なんだかくらくらすると言うか、思考が鈍っている気がする。 変な気分だ。 「ん、ああ」 先に風呂場から出て、置いてあるバスタオルに顔を埋めた。 「はぁ~」 バスタオルの少しの冷たさが顔に心地いい。ずっと、バスタオルに顔を埋めていたい、なんて思う。 洗面所にある鏡に映る自分に目を止める。 頬が桜色をしている。 やっぱり、逆上せていたんだ。 一瞬でも、湯船から上がったとき、立ち眩みをしてしまっていた。 母さんに、アイスを貰って涼もう。 そう思って、とっとと体を拭き、下着だけ身につけ、頭を乾かすことなくバスタオルを頭に掛けたまま、その場を出た。 「早かったのね、瑠衣」 「ン、お湯熱かった」 「あぁ、逆上せたのねぇ。昔から熱いお湯とか、熱いものとか、暑い季節。弱いわよねぇ」 母さんは俺の心情を理解してか、直ぐに冷凍庫からアイスを渡してくれた。 棒付きの風呂上がりには丁度良い、安っぽいソーダー味のガリガリしたアイス。 袋から出して、口に咥えたままリビングのソファに座って、流れていたどうでもいいテレビを眺めた。 『いやぁ、最近は同性愛者が多いらしいですねぇ。なんだか自分の身近にも居ると思うと不思議な感覚ですね』 なんだ、この番組。 『でも、女性の間ではそういったことが好きな方も居るみたいですよ』 ふぅん。 つまんないな、この番組。 「るいー、おまえ何観てんの?」 「同性愛」 「は…?」
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