バトンタッチ─

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「んなこと言われたってなぁ。サボったら学校には行かない訳だろ? つまり、部活は出来ない訳だ」 「まぁ……そーだけど…」 「無理だな。んでもさ、今日乗り切ったら、明日は土曜だろ?」 「……遊びに行くもん」 お、おう。 コイツの口からそんな言葉が出るとは。 そういう約束を破るのが得意な癖に。 「まぁ、な」 「……まぁ…いいよ。どうせ学校行ったって、寝てるだけだし」 ですよね。 凄い問題ありだけど、出席してて、なお、それなりに頭が良いから、教師も強くは言えないんだよなぁ。 かと言って、俺が言ったところで、なにか変わる訳でもないし。 「ナギって…真面目だよね」 「そうか?」 「だって…人生の中で、学校サボったことないでしょ?って言っても…俺も一回しか無いけど」 「まぁ、そうだな。熱でも学校には行くしな」 「それで結局、保健室行きなんだよね。馬鹿だよね」 思い出すように瑠衣は話す。 少し笑っている。 コイツにとって、悪い思い出ではないということか。 少しだけ安心してしまう自分がいた。 ホッとしてしまう。 なぜ、こんな気持ちになるのだろう。 いや、 これに関してもやはり、 理由は解っている。 「ああ、そうだったな」 「なに?気持ち悪い顔して」 相変わらずの毒舌具合だが。 「んだよ、うっせぇなぁ。懐かしいなぁ、なんて思っただけだ。ほら、もう上がるからお前も出てけ」 「あ、ウン。そういえば、ここお風呂場だもんね」 忘れてたのか、、 「あ、でも……まって」 「ん?」 ちゅ、と瑠衣は頬にキスをしてきた。 「ぇ、」 そんな俺の声を無視し、ピンクに紅潮した頬を隠すように、瑠衣はそそくさと、風呂場を後にした。 「ちょ、あんなの無しだろ…」 なんつーか。 最近は瑠衣が、少しずつ変わってきた気がする。 自分に正直になったのかは解らないけど、普段と違う瑠衣は新鮮で、慣れない俺もどこか恥ずかしい、なんて思える。 俺が恥ずかしがることは何もないのだが、 このままだと、俺、 どんどん瑠衣を好きになってしまう。
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