303人が本棚に入れています
本棚に追加
最後の一口のクレープをようやく食べ終われば、それを見計らったように、ナギは口を開いた。
「やっぱ、嫌か?バスケ」
「…ウン」
ナギは俺が嫌がることはしてこないし、強制してこようとはしない。
ウザイこととか、しつこいこととかは、あるけど、俺がちゃんと嫌がれば、してこなくなる。
けど、この事に関しては曖昧な返事で返してしまっているから、ナギもこうなるのだと思う。
やっぱり、小学生の頃からずっとナギとバスケをしてきたし、いきなり二年に上がってから止めてしまった。俺がいないと、みたいなのがあるのだと思う。
でも、バスケをしたくない訳じゃない。
バスケを嫌いになった訳じゃない。
ナギが誘うなら、本当はまだバスケをしていたいと思う。
矛盾した言葉ばかりを並べてしまうのは、まだ、答えが出ていないからなのかもしれない。
気づけば俺は、足を止めていた。
少し先で止まったナギを見る。
「瑠尹…?」
「ナギはさ、俺がバスケを止めた訳、知ってるじゃん」
「ああ」
これは俺のワガママ。
ナギもそれは知ってる。
けど、どうしても許せないことぐらい俺にだってある。
「…イヤだよ」
ほそり、とか細く言葉は流れる。
「うん、知ってる。瑠尹のことは、俺でなんとかするからさ」
「なんとか、なる…?」
俺のワガママが通るの?
「なる」
腰に両手を当てて、当然だろ?みたいな顔をして、ナギは断言する。
ナギがそういう態度を取ると、そうなれるのかもしれない、なんて思える。
「もし、おまえのこと、チッコいって言った奴には、俺がボールを顔面に投げつけて二度と言えなくするからさ」
自分でも思えてしまう。
バスケを止めた理由がくだらないってこと。
身長が無い。
こんな理由で止める人っているのだろうか。
とことん、面倒くさがりなのかもしれない。
「でも…まだバスケはやらないけどね」
「まじかよ。騙された気分なんだけど」
「騙してないよ」
最初のコメントを投稿しよう!