優しい渚真琴と──

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バスケをやっているといつも思う。 周りの身長が高くて、俺はいつもポツンと小さい。 他校から、変に笑われたり、特に特技がある訳でもないから、馬鹿にされる。 ただ、小さいってだけで、馬鹿にされる。 最終的には、同じチームの奴等にも、馬鹿にされて試合が負ければ、俺のせいにさせられる。 もう、そんなことに付き合うのは嫌だ。 それに、ナギはいつも俺を守ってくれるから、ナギも孤立してしまう。 そんなナギは嫌だから。 陽は完全に落ち、こんな、田舎には暗い道しかなかった。 街灯もぽつりぽつりとあるだけで、消えそうな物もあれば、完全に消えているものもある。 ちゃんと明かりがついている街灯には、蛾が集まっている。 そういうのもあってか、先の先の前が良く見えない状態だった。 家の明かりがあることが唯一の救いなのかもしれない。 「ナギ」 「…?」 ふらふらとしているナギの左手を掴む。 車道側を歩くナギを引き寄せて、しっかりと手を握る。 「怖いのか」 「違う。少し…こうしてたかっただけ」 くすり、とナギが暗闇で笑うのが解った。 そんなナギの反応に俺が機嫌を悪くするのは当たり前だった。 ただ、そんなことぐらいナギは解っているから、俺の機嫌が良くなるような真似をしてくる。 しっかりと手を握り返し、頭を優しく撫でてくる。我ながら単純だと思う。 けど、ナギがこうすると、機嫌が悪くなったものが良くなるのだ。 人の温もりに飢えているのかもしれない。
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