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瓢吉は柄杓を置いた。
「ふーっ! ほんでもって腰抜け侍を吹聴した真意を糺すとか、なんとか……次第によっては只では済まさぬなどと」
瓢吉は手拭いで汗を拭いたが、それが汚れを顔全体に広げている。
「なにいっ? それで、てめえは、おめおめと道案内して来やがったのか! このとうへんもくが!」
「兄貴、それを言うなら唐変木でやす。とうへんぼく」
「うっせいや! てめえが、俺の学のねえのを馬鹿にして偉そうに指南するのは十年がとこ早えんだよ。この、でくたら棒が」
「兄貴、それを言うなら木偶の坊。でくのぼうでがんす。いや、すいやせん! これには、ちょいとした訳がありやして。はじめは別の浪人の足を引っかけちまって、もんちゃくになったんでがんす」
「なにいっ? もんちゃくだあ? 半人前のてめえが、いっちょ前にもんちゃくだあ? てめえが、よそ見でもして、しくじっただけじゃねえのかっ!」
「へい。まあ、そんな訳で。浪人は、あっしを睨んで刀を抜いた。あぶねえとこだった。そこへ、あの侍が現れて、薪ざっぽで浪人の手を、ぽこたら打ったんでがんす」
「ぽこたら? なんだ、それは!」
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