第1章

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引き戸の外に荷車があった。 がこんっ! ばきんっ! がらがらがらがら…… 「うわあっ!」 瓢吉は荷車にぶつかり、ふっ飛んで雑草の上を転がった。 「あいてててててっ!」 そこへ、毛皮をまとった男がぬっと立った。煙管をくわえている。 「瓢吉! 相変わらず、おめえは瓢箪顔だな」 「あっ! お頭っ! てえへんでがんす! 早く逃げておくんなせえっ!」 瓢吉は腰をさすりながら起き上がった。 「出し抜けになんだ! 何事だ ! 」 鬼熊が呆れながら煙を吐いた。 「実は……かくかくしかじかで……」 「なにいっ? 一人で乗り込んでくるだとお? あの腰抜けがか?」 鬼熊は、かつんと煙管を縁台に当てて灰殻を落とした。張り出した額のせいで眼がくぼんで見える。 「いや、お頭。あんときゃ、あの侍は女連れだったからおとなしくしただけで。あっしは見たんだ。ありゃあ相当、腕が立ちますぜ。逃げておくんなせえ!」 「馬鹿こくでねえ! わしを誰だと思ってる? ああん? 泣く子も黙る鬼熊だ。侍なんぞに、いちいち、たまげてられるか! おもしれえ。相手してやろうじゃねえか」 鬼熊は傲岸と言い放った。
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