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「で、でえじょぶでがんすか? 虚勢を張らずに逃げたほうが…………」
鬼熊がぎろりと瓢吉を睨んだ。
「わしを馬鹿にしてるのか? ああん? 本当は弱いくせにと腹ん中で馬鹿にしてけつかるのか、てめえは!」
「とんでもねえ! お頭には恩義がある。だからでがんす。この、あっしの、髻(もとどり)を目にも止まらぬ早さで斬ったんですぜ。たまげたのはあっしだけじゃねえ。浪人も侍に頭を下げたぐれえで」
「なにいっ! おめえ何やらかしたんだ!」
「へい。はじめは居酒屋で、かごかきの三平と言い合いになりやして。表へ出ろい、上等だ。揉み合いながら、のれんをくぐったとこで、あっしが浪人の足を引っかけちまいやして」
「浪人? あの侍は浪人なのか?」
「いや、そうじゃねえんで。気の短けえ浪人が刀を抜いた。あっしは、もう駄目かと思ったぐれえで。そこへ例の侍が通りがかった。間に入って助けてくれたまではいいんだが、あっしの顔を覚えていやして。山賊の手下だな。預けた刀を貰いに行くから案内しろと。こんな訳なんで。へい」
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