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“ピローン ピローン”
美容室に置かれているテレビからニュース速報の合図が鳴った。
画面の上部に白文字でテロップが流れる。
「連続殺人犯の杉内鷹也が取り調べ中に死亡」
細身で背の高いイケメン美容師は、折田伊那子の黒くて長い髪に茶色い染料を塗り込みながら速報に気付いた。
「取り調べ中に死ぬなんて、警察は何か無茶な事でもやったんですかね」と伊那子に話しかけた。
伊那子は、手元のファッション誌に目を落としていた。
「誰か死んだの?」
「被害者の頭蓋骨をくり抜いて殺していた猟奇殺人犯の杉内鷹也ですよ。ついに捕まったとホッとしたのに、死んじゃいました」
「杉内鷹也…」
美容師は熱心にファッション誌を見ている伊那子に訊いた。
「洋服の購入ですか?」
「ええ。このあとショッピングモールへ行って洋服を買うつもりなの」
「それは楽しみですね。でも今お召しの青いワンピースも素敵ですよ」
「ありがとう」
染料を塗り終えた美容師は、「このまま暫くお待ちください」と言って伊那子から離れて奥に行った。
『堰野旗光子の息子…。死んだか…』
伊那子はパタンとファッション誌を閉じた。
第三章 了
第四章へ続く。
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