正室の秘密を知る姫

8/13
前へ
/13ページ
次へ
話し終えると、信長はグラスの葡萄酒を飲み終え、物思いにふけるように遠くをみつめる。 ようやく美加は口を開いた。 「帰蝶姫様は、その悲しいお最期のために、城内のものも家臣の方々もご存じないのでしょうか?」 「予は口止めなどせぬ。 お濃なりの潔い最期だ。 さすが道三の娘。 戦国の姫だ。 だが、家臣どもも、口にするのがはばかれたのだろう。 知る者は語らず、知らぬ者は尋ねようとせず・・・。 お濃のことを知らぬ者がこの城内のほとんどか。 年を重ねるということは、つらいことでもある。」 美加は今まで、信長公が五十手前の男性として見たことはなかったが、今夜は年相応に見えてくる。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加