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話し終えると、信長はグラスの葡萄酒を飲み終え、物思いにふけるように遠くをみつめる。
ようやく美加は口を開いた。
「帰蝶姫様は、その悲しいお最期のために、城内のものも家臣の方々もご存じないのでしょうか?」
「予は口止めなどせぬ。
お濃なりの潔い最期だ。
さすが道三の娘。
戦国の姫だ。
だが、家臣どもも、口にするのがはばかれたのだろう。
知る者は語らず、知らぬ者は尋ねようとせず・・・。
お濃のことを知らぬ者がこの城内のほとんどか。
年を重ねるということは、つらいことでもある。」
美加は今まで、信長公が五十手前の男性として見たことはなかったが、今夜は年相応に見えてくる。
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