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悠之丞は、多神子に宝珠を差し出した。
それは実態のない悠之丞とは違い、
両手で包むと ずっしりと重く
ほのかに暖かく、うごめく鼓動が感じられた。
「 これは‥‥一体何でございましょう? 」
「この宝珠には、私の式神
《孔羽(こうう)》が封印されているのです。
今から1000年前のことです。
私の死後、
孔羽は 他の陰陽師に使われることを嫌い
自分で自分をこの宝珠の中に封印したのです。
この封印は、私とよく似た波動の持ち主でなければ
解くことができません。
また、封印を解いた者が
孔羽の主となる運命(さだめ)であります。
数多(あまた)いる子孫の中で、
一番 素質と才能にめぐまれ 波動がそっくりの
この子孫に、この封印を解いてもらいたい。
そなたの力を貸してはいただけまいか」
悠之丞は、一気にそう説明した。
「ちょっと待ってよ、悠之丞さん」
あかりは、たまらず口を挟んだ。
「波動は似てるかもしれませんけど、
私には、式神を使う能力も霊力もありませんし、
一番 素質も才能もないの間違いでしょう。
封印を解くなんて無理ですよ」
悠之丞は、あかりに向かってにっこり笑うと
「子孫よ、あわてるでない。
もとより承知しておる。
そなたの力は、封印でもされたかのように
眠っているだけなのだ」
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