第4章 陰陽師

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悠之丞は、多神子に宝珠を差し出した。 それは実態のない悠之丞とは違い、 両手で包むと ずっしりと重く ほのかに暖かく、うごめく鼓動が感じられた。 「 これは‥‥一体何でございましょう? 」 「この宝珠には、私の式神  《孔羽(こうう)》が封印されているのです。   今から1000年前のことです。 私の死後、 孔羽は 他の陰陽師に使われることを嫌い 自分で自分をこの宝珠の中に封印したのです。 この封印は、私とよく似た波動の持ち主でなければ 解くことができません。 また、封印を解いた者が  孔羽の主となる運命(さだめ)であります。 数多(あまた)いる子孫の中で、 一番 素質と才能にめぐまれ 波動がそっくりの この子孫に、この封印を解いてもらいたい。 そなたの力を貸してはいただけまいか」 悠之丞は、一気にそう説明した。 「ちょっと待ってよ、悠之丞さん」 あかりは、たまらず口を挟んだ。 「波動は似てるかもしれませんけど、 私には、式神を使う能力も霊力もありませんし、 一番 素質も才能もないの間違いでしょう。 封印を解くなんて無理ですよ」 悠之丞は、あかりに向かってにっこり笑うと 「子孫よ、あわてるでない。 もとより承知しておる。  そなたの力は、封印でもされたかのように 眠っているだけなのだ」
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