第1章 神宮寺 あ か り

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3・母 恵(めぐみ)    あかりの母、恵は代々巫女の家系の新城家の生まれである。 巫女と言っても一般にはあまり馴染みがないと思うが、巫女とは、 古来より、祈祷をしたり、占いをしたり、時には御神託を得て他の者に 伝えたりと、神様との連絡係のような女性のことである。 最近では、神職の補佐をしたり、神楽を舞ったり、御守り売り場の 手伝いをしたり、という女性を指して使う事がほとんどであるが、 新城家は先祖代々、巫(かんなぎ)として高い霊能力を持ち、 神に仕える一族なのである。  新城家は、とある山深いところに位置し、地元の郷の者以外には、あまり 巫女としての存在を知られていないはずである。 が、しかし、 当主の霊力を求めて、新城家には相談者の来訪があとを絶たない。 相談者のほとんどは、地元の著名人や資産家などであるが、噂をききつけて 遠方からやってくる者も 少なくない。 現在は、恵の双子の姉 光(ひかり)が16代目の頭主を引き継いでいる。  恵も新城家の直系であるので、高い霊能力を持っていたが、みさとを 産んでからは、霊的なものをさっぱり感じなくなっていた。 まるで、すべての霊能力をみさとに渡してしまったかのようである。 だからと言って特に困ることもないので、気にはしていない。 あかりを産んだ時には何の変化もなかったのだから、不思議だが、 きっとそうなる事が神の御心に沿うことなのだと恵は思っている。
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