第1章

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とある女性の決意  金の巻き毛が頬にかかっている。それを指でそっと直してやる。触れた頬は冷たい。昨日までは血色良くニコニコと笑っていたのに。  夫と娘と朝食を食べているときにその報せが来た。義妹が亡くなったと。  信じられなかった。昨日まで元気だったのに。もともと体の弱い女性ではあったが、それでもこの一年はたいした病気もなく、まだ幼い末子を抱いて楽しげに日々を過ごしていた。  それなのに。  駆けつけた部屋ではグラウスが号泣していて、子供達もメイドに支えられながら母を呼んでいた。  お姉様、お姉様と他国から嫁いできた私を慕ってくれ、私の息子が天に召された時もずっと側で支えてくれた貴女。  3日後に霊廟に納められた。  白い石棺にすがりつく子供達を抱き締め、誓った。この子達の母となることを。貴女の代わりに、貴女がしてやりたかったことを全て叶えると。  だから安心して眠って欲しい。
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