第1章

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花畑王子の懺悔⑤  披露宴の前にもう一度、私の本心を伝えなければ。妻を迎えるが私の愛情を疑わず受け入れて欲しい。  結果、ミズキ殿からは強烈な拒絶と説教を受け、陛下からは王族として認めないと言われ、何よりも父上からの一言が痛かった。  母上の墓前に立つことを禁じられた。  母を悲しませるなと。  ミズキ殿と出会う前の自分の目標は、自慢の両親の様な夫婦になりたい。  陛下の様な国王となる。  今の自分は?  部屋に戻ると幼なじみでもあり側近でもある友から、妻の様子を聞いた。  晴れ姿を誉めるでもなく義務的に式を済ませ、さっさとミズキ殿の所へ去ってしまった夫に対して傷付き、しかし妃として周囲の者にも気遣い、気丈に振る舞っていたと。  今のお前は、そんな彼女に対して相応しい男なのか?  静かに問われた。答えれなかった。  描いていた未来の自分。  現実の自分は、あまりにも浅ましいものだった。
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