第1章

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花畑王子の懺悔⑥  やっと客観的に自分というものを見つめれた。そして、羞恥し嫌悪し、ひどく後悔が募った。妻に対して。  後継としての覚悟、1人の人生を受け入れ守る覚悟。わかっているつもりだった。ミズキ殿の怒鳴り声がよみがえる。  気に入った物をただ欲しい、誰の物でも気に入ったのだから欲しいと我が儘を言い、周りのことなどお構い無しで駄々を捏ねる子供。それが自分だった。  目の前が晴れたように感じる。  披露宴まであとわずか。その前に謝らなければ。傷付けてしまった妻に。妻を慈しみ育てた妻の家族に。周囲の者に。  控え室に入ると、妻は泣いていた。  国許から付き添ってきた侍女達の、私を見る目は冷たい。当然だ。  泣いている妻の手を取り跪いた。  後はもうひたすら謝った。謝って謝って謝った。泣いていた妻がきょとんとするくらいには何度も。  妹よりも若い妻の思いと覚悟に相応しい夫になると誓った。妻はまた泣いた。  本当に申し訳ない。
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