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その女性はまだ若く、裸足であるからか脚には細かい傷が目に入る。
身につけている衣服はぼろぼろとなっており、おそらく道なき道を逃げていたのだろうと予想できた。
(とりあえず医者に診せるか・・・)
ライエは静かにその女性を背負うと、ハイネの町へ向けて足を進めた。水の都、ハイネ。
海と森に面した自然が豊富な美しい町である。
商業も盛んであるが、周囲は魔物の生息する環境も近いことから町の出入り口には衛兵が構えており、町の内外の治安に目を光らせている。
その町の医療施設にライエの姿はあった。
「お、じーさん。あの娘の様子はどうだ?」
気を失っていた女性を診察していた医者の老人が医療室から出てきたのを見て、ライエが声をかける。
老人はおそらく手についた消毒液を拭っているのだろう、布を持ちながらライエに答えた。
「擦り傷が目立ったが、大した怪我はなかった。魔物に襲われたショックで気を失っていたんだろう。さっき目を覚ましたからもう大丈夫だ。……ただ、ちょっと気になることがあってな……」
医者の老人は蓄えた口髭を弄りながら最後の言葉を濁した。
「気になること?なにがだ?」
やや考える素振りを見せた老人だったが、ライエのその問いに直接答えることはなく、ただ「会って話してみればわかる」とだけ伝え、医療室の中へと招いた。
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