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…………夢を見た
知らない人、知らない景色、知らない建物
どこか分からない世界に立っている自分が居た
映画や漫画に出てくるような、非現実的な世界がそこには広がっていた
知らない世界のはずなのに、なぜか懐かしさを感じてしまう
知らない人物のはずなのに、心が締め付けられるほど愛おしさを感じてしまう
とても大切な、大切な
………ロリ
ピロリロリ
スマートフォンがバイブの震えと共にメロディーを奏で始める。
暗闇から勢いよく引っ張り出されるような感覚だった。
今まで夢を見ていたはずなのだけれど、反動ですべてを忘れてしまった。
とても大切な夢のような気がしたのに、今になっては『夢を見ていた』という事実だけしか残っていなかった。
うっすらと目を開け、今だにぼやける視界の中、音の鳴る方へと顔を向ける。
充電器に刺さったままの携帯電話は午前七時を告げていた。
どうやら携帯のアラームが鳴っていたようだ。
私は携帯に手を伸ばしてアラームを止めると、毛布を剥ぐって体を起こした。
夜更かしをした覚えはないのに疲労感が体を襲う。
珍しいことではないのだけれど、すっきりとした気分で起きられたら、さぞかし気持ちがいいだろうなと、なんとなく考えた。
今日もいつものように学校に行かなくてはならない。
遅刻なんて出来ないので、仕方なくベッドから足を下ろして立ち上がり、締め切っているカーテンを開けた。
空を見上げると、晴れとは言い難いけれど曇りとも言い難い、なんとも微妙な天気だった。
このまま晴れてくれたらいいのだけれど……。
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