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学校に向かう途中、少し時間があるという理由で、住宅街の小さな公園に足を踏み入れた。ベンチに持っていた荷物を置いて、私と薫は二つあるブランコにそれぞれ腰掛けた。
「今日はどうしたの?いつもより早かったけれど」
ブランコをゆっくり揺らしながら、疑問に思っていたことを薫に聞くと、薫は別に大したことじゃないよと首を振りながら笑顔で答える。
「夢を見てね。少しモヤモヤしてたから、真央の顔を見たらすっきりするかなと思って」
「どんな夢?」
薫の夢の内容が気になって問いかけるが、薫が困ったようにショートの短い髪を指で弄びながら、もう一度首を振った。
「実はまったく覚えてなくて」
「何それ」
薫の返事に私は思わず笑い声を零す。怖い夢でも見たんじゃないかと心配していたのだけれど、少し安心した。
「私も夢を見たよ」
「どんな夢?」
私が今朝見ていた夢の話をすると、今度は薫が夢の内容を聞いてきた。
「実はまったく覚えていなくて」
「何それ」
先ほどとまったく同じくだりに、お互い顔を見合わして笑った。
きっと、忘れてしまうくらいだから大した内容じゃないのだろうと、自分の中で解決させた。
ひとしきり笑うと、私は薫の顔を見つめる。
彼女とは幼い頃からの付き合いだけれど、今まで喧嘩すらしたことがないほど意気投合し、今まで仲良く付き合い続けている。
彼女と側に居ると心地がいい。彼女の側こそが自分の居場所だと、本気でそう思っている。
薫も同じように思ってくれていると嬉しいのだけれど、そんな事を言うときっと笑われてしまうに違いない。
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