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笹川の乗ったタクシーの運転手に行先を告げ、一万円を渡しておいた。
「あっりょがろうございまふぅ~(ありがとうございます)」と呂律の回っていない笹川は、遠くに消えてしまうまで窓から顔を出し、こちらに手を振っていた。
自分たちよりも若いのに、思う存分飲めないなんて気の毒で仕方ない。
そんな内容の会話を交わしながら、二件目にはしごする。
こちらも行きつけのバーだ。ここは他と少し変わっている。
何が変わっているのかと言うと…。
足元の青い照明だけを頼りに、二人が地下への階段をおり、店の扉を開けると、待ち構えていたのは女装をしたやけに体格の良い男性スタッフ。
「あら~ん、イコちゃんサキコちゃんいらっしゃいね~ん」
そう、ここは、男性たちの営む花園。またの名をおかまバー。
出迎えてくれた百合さん(仮)は、太い腕を伸ばし、やけに骨ばった大きな手で二人の手を片方ずつ握り中へ連れて行く。
ブロンドの髪が怪しく揺れ、背中の大きく開いたドレスからは雄々しい肩甲骨をのぞかせていた。
入口から入ってすぐにフロントがあり、隣には席が六つのバーカウンター。そこに連れられた。
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