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「上手くいかないこともあるかもしれない。けれど少なくともアタシはあなたを見ているわ。あなたの演技が好きだもの。おばあ様やお母様に負けないくらい温かいんだから」
そういって古い友人を懐かしみ、イコを慈愛で包むかのように笑んだ。イコは小さく頷いた。
「サキコ」
席に戻ったイコは少し目が腫れ、アイメークも崩れていた。
強がりなイコのことだ。そのことに触れて欲しくもないだろう。
サキコは何も聞かないことにした。
「サキコ、私。上手く笑ってみせるから」
今度の舞台で、とイコは前を見据えながらに言う。
彼女はサキコと競い合っていた頃の、野心に燃えたギラつきのある目をしていたのだ。
サキコは安堵とともに破顔した。
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