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劇団のイコと奥江ヒカリを除いたほぼ全員が、劇長と寝ている。
しかし、体を張っているからと言って、誰一人として奥江ヒカリを主役の台座から引きずり降ろせる者はいなかった。
演技力も抜群だが、未だに高校生であるということが彼女の立ち位置を微動だにさせない理由だろう。
リコは二十四、サキコは二十三であるから、若さだけで言うと、到底敵うはずもなかった。
サキコの涙が枯れる頃、夜は少しずつ朝に向かっていた。
練習室を出ると、廊下を進んだすぐそこのリビングにサキコを通す。
このレッスン室が備えてある見事な一軒家は、リコの大女優でもあった祖母の忘れ形見だった。
女優であった彼女の母親も事故で四年前に他界しているので、
ただ一人の主として、広過ぎるこの家で暮らしている。
田舎から出てきたサキコがここに住むようになったのも、たった一人になってしまったイコを思ってのことだ。
他人から言わせると図々しいの一言に尽きるのだが、リコは純粋に嬉しかった。
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