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その間にあたしは私服に着替えるつもりだ。そして玄関へ向かう。
少しだけ緊張してきた。いや、かなりだ。
ばれたら、恐らく、拘束される。
心臓がどくんと脈を打ち出した。
あたしはひたすら頭の中で、冷静に、冷静に、と、そればかり繰り返した。普通のフリをして、お茶を飲みながら。
雅也がTシャツを持って戻って来た。
「着替えたら、洗うやつは遠慮なく持って来るんだよ。恥ずかしかったら洗濯機にいれて。下着とか気になるなら俺触らないよ」
あたしの膝の上にシャツを置くと雅也は笑う。
「もう何百回も洗ってるけどね。でももし嫌なら」
「・・・・・・。平気・・・お願いする・・・」
あたしはわざと甘えた。
高鳴る動悸がばれないよう、できるだけ話す言葉を単調にした。
「・・・・・・雅也・・・」
向かい側に座った雅也があたしを見つめる。
「んー?」
「・・・・・・」
「・・・どうした?具合悪い?」
まずい。何故か呼んでしまった。あたしは何を言おうとしたんだろう。変に思われたくない。
熱のせいで表情はぼーっとしているだろうけど、心の中は大パニックだった。
冷静にの言葉が早口で連呼される。
「横になりたいならなっていいんだよ?そこでなってもかまわないよ何か、タオルケットでも持ってくるし」
「・・・・・・好きよ・・・雅也・・・」
「・・・・・・」
あたしの突然の言葉に、雅也は無表情で黙った。あたしをじっと見ている。
あたしの頭の中は真っ白だった。こんな言葉言ったほうが怪しまれる。
やばい、なのに勝手に言葉が出る。
「・・・あなたがあたしにした酷い事は・・・・・・全部全部許してあげる」
俊太のことは別だけど。
いやその前に。何を言っているのあたしは。今こんな事を言ったらまずい。
普通にしてなきゃだめなのに・・・!なんでこんな事言っちゃったんだろう・・・。
・・・もう会えなくなるから?別れの言葉を言わずにはいられなかった?
いつまでもあたしは馬鹿だ。
雅也は黙っていたけど、やがて普段どおりの静かな笑顔をあたしに向けてきた。
「毬奈・・・」
何か気付かれただろうか。
雅也は勘がいい。絶対に気付くはずだ。
雅也はゆっくり立ち上がりあたしに近づいて来る。
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