第2章

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男はキッチンのシンクまで歩いて行き、タオルを濡らすとそこに氷を挟んだ。 「いったいな~もー……」 若いってヤダヤダ、と呟きながらタオルを頬に当てる男は、 それでもどこか嬉しそうに時たま俺をちらりと眺める。 その顔の気持ち悪さったらねぇ。 「次またやりやがったら本気で殴る」 脅すように低く声を這わせて言うと、男はニヤニヤと笑いながら肩を竦めて見せた。 そんな態度がまた癪に触るものだから、これ以上ないほど思い切り睨み付けてやる。 「なら俺の事煽んないでね?」 「は?煽ってねぇし」 「そういう意固地な態度が煽ってんのよ、タカオ君?」 「…………」 噛み合わない。 どこまでも会話が噛み合わねぇ。 これ以上言い争うのも無駄だと思い、俺は振り払うように身を翻してリビングから出て行った。 かくして。 初めてのご対面は、最低最悪だった。 これからこんな野郎と一緒に住まなきゃなんねぇと思うと、虫唾が走る。 それでも、この土地を離れるよりはマシだ。 ………… マシ…………。 マシか?
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