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男はキッチンのシンクまで歩いて行き、タオルを濡らすとそこに氷を挟んだ。
「いったいな~もー……」
若いってヤダヤダ、と呟きながらタオルを頬に当てる男は、
それでもどこか嬉しそうに時たま俺をちらりと眺める。
その顔の気持ち悪さったらねぇ。
「次またやりやがったら本気で殴る」
脅すように低く声を這わせて言うと、男はニヤニヤと笑いながら肩を竦めて見せた。
そんな態度がまた癪に触るものだから、これ以上ないほど思い切り睨み付けてやる。
「なら俺の事煽んないでね?」
「は?煽ってねぇし」
「そういう意固地な態度が煽ってんのよ、タカオ君?」
「…………」
噛み合わない。
どこまでも会話が噛み合わねぇ。
これ以上言い争うのも無駄だと思い、俺は振り払うように身を翻してリビングから出て行った。
かくして。
初めてのご対面は、最低最悪だった。
これからこんな野郎と一緒に住まなきゃなんねぇと思うと、虫唾が走る。
それでも、この土地を離れるよりはマシだ。
…………
マシ…………。
マシか?
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