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「どうしよ……ほんとに、止められないかも……」
困惑が入り混じったハルの声は微かに揺れていて、その頼りなさに何故か胸の奥底が揺さぶられる。
この気持ちが何なのか。
それを考えるのは面倒臭すぎる。
マジで、うぜぇ。
この状況で難しいことを考えんのは、まっぴらごめんだ。
これ以上の厄介ごとはいらない。
いらねぇんだよ。
ーーーーだから。
「………………好きにすりゃいいだろ……俺は関係ない」
自分の身体のくせに、何言ってんだか。
「ーーっ、ン、ちょ、っふ」
噛み付くようにキスをされ、そのまま右手が胸の突起をギュッと強くつかむ。
痛いのとキスが激し過ぎるので、俺はそれ以上考えることを放棄しこの波にのまれた。
「ぃて、馬鹿お、いっ……っ、」
降り注ぐ唇に、噛み付いて来る歯。
セックスって、こんなんだったか?
うっすらとそんなことを考えながら、開かれて行く自分の身体から少しだけ目を背ける。
キッチンの中で後ろからこの男を受け入れるなんて、一体どうしてこんなことになっちまったんだろう。
それでもまともな思考は徐々に削ぎ落とされ、いつの間にか移動していたソファーに押し付けられたまま俺たちはまるで獣みたいに身体を重ねた。
次に気が付いた時。
床に寝転がっているハルをソファーの上から見下ろしながら、お前こそ風邪引くぞ、と思ったのがその日最後の記憶だ。
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