師弟子―zero―

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―――― 差し出された手を握り締めながら歩いていくと丘に木で作られたこじんまりした家が建っていた。すぐ側には大木があり昼寝には最適な空間があった。 「あそこが私の家だ。いい家だろ?」 確かに木の温かみがあっていい家だったので素直に頷いたシェルタにグリスは満足そうに笑った。 玄関まで行きグリスはガチャリと扉を開けると「ただいまー!」と言った。 誰か他に居るのかとシェルタが聞けばグリスは笑いながら言った。 「いないよ、だけど家に帰ったら言うのは当たり前だ!ほらっシェルタも言って!」 先に入ってしまったグリスを見ながらシェルタはおどおどした。 繋がれていた手はすでに離されていてシェルタは自分の服を掴みながら口をぱくぱくさせた。 「っ…た、だぃ…ま」 最後の方は聞こえづらく詰まり詰まり言った不器用な、ただいま。 だけど直ぐにその言葉に 「おかえり」 グリスは穏やかに返事を返した。 その言葉に愛おしさが混じっているのは気のせいではないのだろう。 初めて向けられたそれにシェルタは戸惑うばかりだった。
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