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「大変――!」
「すぐに病院へ!」
倒れていたカスミとツカサは、伊波の車に乗せられた。
車に乗り込む前、アヤはぐるりと辺りを見回す。
この二人はきっとあの『人が消える村』に行ったのだろうが、辺りにはそれらしき立て札がない。
(彼らは、いったいどこから……?)
しきりに首を捻り、しかし今は彼らを病院へ連れて行くことの方が先決。くるりと森に背を向け、車の助手席に乗り込んだ。
アヤは後部座席を見やる。腹部から血を流し、弱々しく息をする彼の手に、しっかりと重ねられた彼女の右手。
「大丈夫、すぐ病院に着くから」
相変わらず虚ろな表情のカスミを見て、微笑み言った。
車は来た道を戻り、最寄りの病院へと向かう。後部座席で振動に揺られるカスミの虚ろな瞳には、赤い着物を着た少女の暗い光が宿っていた。
赤ノ刻‐アカノトキ‐ 完
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