序章 始

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   視界不明瞭な霧の中、彼女はもつれる足を引き摺り転びそうになりながら、それでも尚、前へと進む。  目の前には大きな鳥居。濃霧の中、目にも鮮やかな朱色の鳥居。  彼女は怯えていた。  背後から追いかけて来る『何か』に。  ――カタ、カタカタ。  聞こえる不気味な音。 「いっ!」  艶やかな長い髪を振り乱し、彼女が背後のそれを目にした時には、既に遅かった。 「!」  ――グシャッ。  飛びかかり襲う黒い影が、彼女を喰らう。  
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